慢性疾患 弾発指(ばね指) 症状・病態 手指の曲げ伸ばしは、腱という強いうどんぐらいの太さの紐によって行われています。 腱は一番末梢では指先の骨に停止していますが、停止部は非常に強固な結合組織性の連結となっています。逆に腱は中枢部では前腕部で大きな筋肉となり、これが動力源です。腱は骨に沿っていますので、所々にある腱鞘という滑車(トンネル状になっています)の中を滑走し、骨から大きくずれないようになっています。ちょうど釣竿とテグスの関係に似ていますね(図1)。ただ、人体にはほぼ隙間がなく、腱と腱鞘は密接しています。 指を使いすぎたり、加齢によって組織の柔軟性が損なわれたりすると、指の曲げ伸ばしに際し、腱と腱鞘の間に摩擦が生じて双方が腫れてきます。それでも酷使し続けると腫れはひどくなって、ついに腱の線維がよれてきて、腱の途中にこぶが生じてしまいます。その結果この“こぶ”が腱鞘を通り抜けるたびに、ポクン、カクンとばね現象が出現するため“ばね指”という訳です。指の付け根で掌側の部分で発生します。親指に多いです。最終的にはこぶが腱鞘を通れなくなって、ロックしてしまい曲がったまま伸ばせない状態になることがあります。 (図1) (図2) 治療 非常に頻度の高い疾患で、月に4.5例は手術をしている状況です。 投薬、物療、腱鞘内ステロイド注入などの方法があります。2~3ヶ月経過しても治癒しない場合や、ロックしている場合などは手術を考慮します。手術は大変なものでなく、指の付け根の掌側を、1.5cmほどメスを加えて、腱鞘を切開(除去)します(図3)。熟練した医師なら7分程度で終えることができます。術後は10日間ほど包帯で術創部の保護をしますが、手術翌日からむしろしっかり目に動かしてもらいます。引っかかりが取れ、すっきりします。局所麻酔ですのでリスクはほぼなく、手術の結果にばらつきがありません(よほど特殊な状況がない限り良くなります)。 いたずらに治療期間が長引くよりは、早期(発症後3.4か月程度)に手術に踏み切ったほうが得策のことが多いです。最終的には、もっと早期に手術してもらえば良かった、という感想をもたれる方が大勢おられます。 (図3) へベルデン(ヘバーデン)結節 前の記事 生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常) 次の記事